Alice In Underground (アリス・イン・アンダーグラウンド)

〜アリスの地下研究室〜

 


【 HDD(ハードディスク)を高音質リニア電源でドライブしてみましょう。】

 

アリス 「PCやHDDをリニア電源でドライブするとオーディオ的にクオリティーが上がるという話があります。
     体験したことのない人にとって、にわかには信じがたい話ですがそういうケースもあるようです。
     NASのHDDのリニア電源駆動はこちらでやっていますので、
     もっと高音質になる方法を模索してみようと思います。
     ぶっつけ本番で実験ですね。」

    「トロイダルトランスとディスクリートレギュレーターのLED.Regを使ったリニア電源で
     HDDを駆動することはできましたので、引き続き、以下のテストを行う予定です。」

  ・リニア電源とスイッチング電源の音質は違うの?

  ・リニアレギュレーターを変更すると音質は変わるの?(LED.Reg、opeReg、miniRegなど)

  ・HDDとPCの接続について、SATAとUSBで音は変わるの?

  ・キット化できるの?

 

アリス 「テストは以下のようなシステムで行います。
     PCにはDACがUSBで接続されていて、ここから音楽を聴きます。」

 

アリス 「整流と平滑をCTS−1で行い、電圧の安定化をRBT−1とLED.Reg2で行います。
     それぞれ12Vと5Vを生成しHDDへ供給します。

     HDDは手元で余っていた大事に保管していた3.5インチモデルでSATA出力のものです。
     いわゆる “ 外付けハードディスク ” は内部でSATAをUSBに変換しているものがほとんどなので、
     それを再現するためにSATA−USBコンバーターも用意しました。

     実験のために長めのSATAケーブルを買ったんですが、
     実はPC側のコネクターが通常のSATA端子ではなくて、
     eSATA端子だったためにケーブルを買い直すハメになりました。

     おかげでまだ実験ができません。

     皆さんコネクターの形状にはお気を付けください。」

 

アリス 「さて、無事にSATA−eSATAケーブルが届いたので実験を続けます。

     今回の実験では同時期に購入した同一モデルの3.5インチHDDを使います。
     片方はPC本体のスイッチング電源に、もう片方は今回試作したリニア電源に接続してテストします。
     HDDとPCはSATAケーブルで接続しています。」

     HDD A : PC本体のスイッチング電源で駆動

     HDD B : リニア電源で駆動


アリス 「SATAはプラグアンドプレイに対応しているはずなんですが、
     ケーブルを繋いでもウチのPCではウンともスンとも言わないですねー。
     つないだ状態で再起動するとちゃんと繋がります。
     この状態でSATAケーブルを抜き差しするとちゃんとプラグアンドプレイになっていることがわかります。
     繋いだ状態で再起動しないとPC側のSATAが立ち上がらないのかもしれません。

     というワケで、(HDD A) と (HDD B)へ同一音楽データのコピーが終わりましたので
     さっそく聴き比べてみましょう!


     …


     ……


     ………


     …なんか違う感じがしますね……


     …


     …っ!


     …いや、ほんとに違うよっ!?」


アリス 「以前にPCのメモリーを交換した時に音が変わったので、ヤな予感(?)はしてたんですよ。
     これは明らかに違いますね。どうしてかな?

     リニアレギュレーターにとりあえずの間に合わせを使っているので、改めてチューンしてみることにします。
     厳密(?)な試聴はその後にします。」


アリス 「3.5インチHDDには12Vと5Vが供給されます。
     12Vはスピンドルモーター用の電源で5Vはロジック回路用の電源です。
     スピンドルとロジックで電源が分かれていたほうが高音質化しやすいと目論んだうえで3.5インチを選びました。
     (たまたま手持ちに余っていたからじゃないヨ。ホントだヨ。)
     わたしとしては12V電源のレギュレーターをいじってもそれほどの影響はないだろうと想像してました。
     逆に5V電源は制御と通信をつかさどるので、ある程度の影響があるだろうと想像してました。

     ところがですね、どちらのリニアレギュレーターをいじっても音が変わります。
     これはますます不思議です。いったい何故でしょう?

     アナログ回路の電源をいじった時のようには変わりませんが、なんというのか独特の変化をします。
     実に不思議。まさに オ カ ル ト 。」


アリス 「リニアレギュレーターのチューニングがHDDにも有効であるとわかりましたので、
     チューニングを追い込みつつ先へ進みましょう。」


(ここまでで解ったこと)

・音楽データを保管しているHDDの駆動においても、リニア電源とスイッチング電源では音質が違う。

・リニアレギュレーターの種類を変更したりチューニングを変更すると再生される音質が変化する。

 

アリス 「あ、そうです。
     HDDの電源ケーブルについてなんですけど、

     リニア電源 → ペリフェラル4ピンケーブル → SATA15ピン変換ケーブル → HDD

     と、接続してます。

     ところで、ペリフェラル4ピンケーブルなんですが、市販のものはこうなってるものが多いです。」

 

アリス 「このままではインダクタンスや浮遊容量が安定しませんし
     誘導ノイズに対抗するためにも、ちゃんとこのようにしましょう。」

 

アリス 「まー手持ちの関係でペリフェラルケーブルを使っただけなので、
     リニア電源の出力からいきなりSATA15ピンコネクターにつないだ方が無駄がないでしょうね。」

↓ (その後) ↓

アリス 「と、いうワケで、SATA15ピンコネクターを使って電源ケーブルをつくってみました。
     やっぱりこのようにしたほうが良いですね。」

 

 

アリス 「さー、何からやろうかと思うんですが、
     このあたりでUSBとSATAで違いがあるのか検証しておくことにしました。

     HDD B(リニア電源) とPCとの接続を USB と SATA で切り替えて試聴することにします。

     さてさて、どうなりますか…


     …


     ……


     …あぁ、これは解り易いですね。

     なんと言いますか、SATAのほうがいいですね。
     誤解を恐れずに断言すると勝負にならないと思います。

     USB単独で聴いたときには特に違和感はありません。
     ある種、慣れた音ですし、全く実用になります。

     ただ、SATAと聴き比べるとですね、
     USBのほうが高域がイマイチで、わずかですがざらざらしています。
     音もやや平坦に感じられます。
     SATAのほうが全体的に芳醇になりますし、リアリティーも高いです。

     これは伝送ルートの間に入っているUSBコンバーターの影響なのかもしれません。

     それと、HDD A(スイッチング電源) とUSBの組み合わせでは高域に歪み感が出ることがありました。
     これは電源とUSBとの相性の問題がありそうに感じましたが詳しいことはわかりません。

     と、いうワケでわたしの環境ではSATAのほうが優勢でしたので、
     以下の検証は全てSATA接続で行うことにします。」


(ここまでで解ったこと)

・HDDとPCの接続について、SATAとUSBではSATAのほうが音が良かった。

 

アリス 「そういえばですね、HDDをむき出しで使うのもナンだったので、こんなプロテクター?を購入しました。
     (株)センチュリーの 裸 族 の ビ キ ニ です。」

   
 ※写真は(株)センチュリーHPより転載

アリス 「まぁ、ビ キ ニ なんで防御能力はたかが知れていますが、冷却能力は優れています。
     防振なんかはそれなりに期待できそうですし完全に裸で使うよりはいいように思います。
     それにしてもHDDってけっこー熱くなるんですねぇ…。
     (と、感じたんですが測ってみると42〜43℃くらいでした。)

     それとこれはある意味、重要な余談なんですが、
     高音質化を目指す場合はNASやクレードルを使わずに、
     このような方法でHDDを剥き身で使ったほうが良いかもしれません。

     メリットとしてはこんなことがあります。

   ・電源をスピンドルの12Vとロジックの5Vのそれぞれに独立給電が可能

   ・PCとはUSBを使わずにSATAで接続できる

   ・HDDの入れ替えや増設が簡単

 

アリス 「本題へ戻りましょう。

     だいぶ結果がわかってきましたけど、リニア電源のチューニングも仕上がってきましたし、
     いよいよ比較試聴といってみます。」

 

〜 〜 〜 いろいろ試聴を行う 〜 〜 〜

 

アリス 「……と、いうワケで、
     いろいろ聴いてみましたが、リニア電源のほうが音質には優れるように感じます。
     まとめるとこのような感じです。」

   ・リニア電源のほうが、高域がベールを一枚はいだように伸びる。背景音や空気感、繊細なリアリティーが増す。

   ・スイッチング電源では時として高域が詰まったような歪み感を感じる。中域の押し出しは強くて好感。

   ・ただし、リニア電源は音質の変化が大きいのでちゃんとチューニングする必要がありそう。
    汎用レギュレーターICでは音質改善の効果が限定的な可能性があると思います。


アリス 「アナログ技術にもまだまだ可能性があるようですね。個人的には嬉しいことです。
     わたしは音楽データのHDDについては今後はリニア電源駆動で使うことにしました。」


アリス 「ところで、5Vのリニア電源はSSDの駆動にも転用できそうなので
     そのうちやってみようと思います。これはこれで楽しみです。」




アリス 「レギュレーターの実験をつづけたところ、
     HDDの駆動用に適した特有のチューニングがあることがわかりました。

     高音質化を目的とした場合には
     12V用と5V用とでは有効なセッティングが異なるのが面白いところです。

     キットセットにはHDD駆動時の音質に特化したチューンの
     完成品レギュレーターを同梱することにしました。」

 

アリス 「それと、もう一つ大事なことがあります。

     高音質で音楽再生をしようとするときはPCを再起動させてください。

     Windows8 と Windows8.1 にはどうもリアルタイムデータの処理方法に欠陥があるらしくて、
     PCの休止→再開を繰り返すと、何故か音声などのリアルタイムデータの連続性が失われてしまいます。
     切り身のように細かくブツ切りに再生されるので音楽的に看過できないほどの劣化が生じます。
     何となく曇ったような立ち上がりの悪い音になります。
     ひどくなるとプツプツとノイズが聞こえるようになります。

     PCの休止→再開を繰り返すほどに症状が悪化する傾向があるので興味のある人は試してみてください。
     特に映像+音声の再生時に問題が起こりやすいです。

     わたしのPCに問題があるだけなのかもしれませんが、
     これはXPでは起こらなかった問題です。

     Wondows7 と Windows10 は試していないのでわかりません。」

 

アリス 「HDD駆動用リニア電源 実験キット を光学ドライブの駆動に使えないか?
     という質問がきたので実験してみました。

     手持ちにあった(しばらく使ってなかった)BDR-206Mで実験を始めたところ、
     どうやっても動いてくれなかったので、止むを得ずBDR-209XJBを購入しました(涙)。

     えぇ、新型は快適ですよ。でも、206ってあんまり使ってなかったのに…。

     まぁ、いいです。実験再開。

     スペック上はリニア12V電源の容量が足りてないので心配したんですが、
     何の問題もなく動きました。

     BD、DVD、CDすべて問題なく再生できます。
     リッピングも問題なくできると思います。

     音は…、確かにスイッチング電源駆動の音と違いますねぇ。
     光学ドライブのリニア電源化も意味がある様子です。

     高速読み出しと書き込みについては後日検証。

     光学ドライブに適したレギュレーターチューニングが可能なのかどうかについても後日検証予定ということで。
     (時間があるときに)」

 

アリス 「純銀製SATA電源ケーブルをつくってみることにしました。
     どうなるでしょう?
     早く聴いてみたいものです。

     ↓↓↓

     純銀製SATA電源ケーブルできました。
     やはり、銀の音質が出ますね。
     アナログの銀線と同様に強く華やかな音になります。
     不思議ですねー。」




アリス 「このリニア電源は充分に実用になったのでキットセットをつくろうと思います。

     キットセットはこちら  キットセットの参考資料などはこちらに

     また、HDD駆動用リニア電源の設計で参考になりそうなことを
     簡単にですが列挙しておきます。

     チャレンジする場合は不安がなくなるまで充分に勉強して臨んでください。
     また、最良の結果を得るためには多少の実験や試行錯誤は必要になるので、
     そのつもりでやったほうが良いです。
     時間、労力、熱意、費用、そういったコストを低く抑えたい場合は
     メーカー製の完成品を購入するということも価値ある選択肢です。」


(定格について)
 消費電力や消費電流についてはHDDに定格が記載されていますので、これを参考にします。
 注意が必要なのは12Vのほうで、スピンドルモーターの起動時には定格の3〜4倍の電力を
 消費する場合があることに留意します。


(電源トランスについて)
 トランスの選択は重要です。
 必要な消費電力を供給できるよう、トランスには充分な容量が必要ですが
 大きすぎると突入電流の問題が出てきます。
 適切なトランスを選ぶことでこの両方の問題を回避できます。
 トロイダルトランスは高価ですが入手性が良く、
 漏洩磁束(リーケージフラックス)が少ないのでお勧めです。
 外部への漏洩磁束が多いトランスは、外部から受け取る磁束も同様に多く、
 トランス同士が磁気結合することもあるので注意が必要です。
 IEトランスは安価なため利用価値がありますが、
 どんなに良くつくられていてもトロイダル型やRコア型の10倍以上の漏洩磁束があります。


(整流ダイオード)
 整流ダイオードによっても音質は変化します。
 FRD(ファーストリカバリーダイオード)、SBD(ショットキーバリアダイオード)、
 SiC(炭化シリコンダイオード)などを試してみるといいと思います。
 耐圧と許容電流に余裕を持ちましょう。


(パワートランジスター)
 ディスクリートレギュレーターを使う際にはパワートランジスターを選定することになります。
 想定される動作電流域(コレクタ電流)でhFE(直流電流増幅率)やfT(トランジョン周波数)が
 充分な水準であるものが望ましいです。
 トランジスターを選ぶときには雑誌や他人のブログなどを鵜呑みにせず、
 必ずデータシートを読む癖をつけましょう。
 最初は難しく感じても徐々に解ってきます。


(発熱量)
 パワートランジスターは発熱します。
 これをコレクタ損失と呼びます。
 コレクターとエミッター間の電圧差をドロップ電圧と呼び、発熱量の計算式は、
 コレクター損失(W)=コレクタ電流(I)×ドロップ電圧(V) です。


(放熱)
 パワートランジスターが発熱するので、充分な能力の放熱器が必要です。
 放熱器の能力は(℃/W)のように記載されます。
 これは発熱出力(W)あたりの温度上昇を意味しています。
 例えば、パワートランジスターのコレクタ損失が8Wだとします。
 これに3℃/Wの放熱器を取り付けると、
 温度上昇=8×3=24℃ です。
 これが放熱器周辺温度に上乗せされますから、室温が25℃だとすると、
 放熱器の温度=25+24=49℃ と計算できます。
 トランジスターが熱くなりすぎると破損したり寿命が著しく短くなります。
 できるなら放熱器の温度は50〜70℃未満にしたいところです。
 パワートランジスターの種類によっては外装の一部が金属でできているものがあり、
 そういうトランジスターは放熱器への取り付けに絶縁シートが必要になります。

 


 

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