アリスのディスクリート入力回路付き
高音質プリアンプ基板

(ALP−mkU)

(ラインプリアンプ、RIAAフォノイコライザーアンプ、オープンリール再生NABイコライザーヘッドプリアンプ)


【 バランス伝送への誘惑 RIAAフォノイコライザーアンプ 】

アリス  「ここではターンテーブルのカートリッジからの信号をALP−mkIIまでバランス伝送することを考えます。
      カートリッジからの微小信号をグランドからフローティングにしてバランス伝送し、
      ALP−mkIIで同相除去の処理を行うことで、
      ハムノイズをはじめとするコモンモードノイズを100dB近く減らすことができます。
      バランス伝送も万能なものでは無いため使いどころは選びますが、
      カートリッジからの信号伝送という目的には、バランス伝送の最大の長所が発揮されます。
      バランス伝送の最も向いている使い方のひとつと言えるでしょう。」

アリス  「ALP−mkII とターンテーブルの接続はこのように行います。」

アリス  「カートリッジからの信号をグランドから切り離されたフローティングの状態にして、
      トーンアームをグランドとするシールドケーブルによって伝送します。」

みみずく 「カートリッジをフローティングにして、ALP−mkIIを専用のバランス入力モードでセッティングすると、
      シールド線内部がHotとColdできれいに平衡のとれたバランス伝送の状態になる。
      実はアンプ側をいい加減につくるとバランス伝送の状態にならない。実際にそういう市販品はかなり多い。
      カートリッジからの信号は極めて繊細なので特別に気を遣いたいものだ。」

アリス  「伝送には2芯のシールド線を使えばいいんですよね?」

みみずく 「そう、2芯を+(Hot)と−(Cold)にして、シールドをグランドにする。
      もしくは4芯シールドを使いスタークァッド接続にする。
      スタークァッド接続はケーブル断面をみて対角上にある芯線を接続して二組にして使う方法。
      伝送路の容量値が小さくなるという特徴がある。」

アリス  「へー、そんな方法があるとは。」

みみずく 「素線を使って自作ケーブルをつくるときは、信号線のHotとColdをツイストするとノイズに強くなる。
      それと、LchのHotとCold、RchのHotとColdをそれぞれ対にしてツイストする。
      やらないとは思うけど、LchとRchをまとめてグルグルと一つにツイストしてはダメだ。」

アリス  「トーンアームからのグランドってどうすればいいんでしょう?」

みみずく 「ちょっといいターンテーブルなら信号出力の他にグランド端子がついていて、これがトーンアームとシェルにつながっている。
      信号出力がRCA端子(ピン端子)の場合は、
      スリーブ(外側)の電極とグランド端子との導通が無いことがテスターで確認できれば、そのまま使うことができる。
      グランドと導通している場合はターンテーブル内部の改造が必要になる。
      XLR3端子(キャノン端子、バランス端子)を装備している場合はピンアサインを確認すればそのまま使える。」

アリス  「なるほど。XLRがついていると便利そうですねー。」


【 いくつか押さえておきたいこと 】 ※アンバランス入力のセッティングとほぼ同じ内容です。

アリス  「ALP−mkIIはイコライザーアンプ(周波数特性補正増幅器)として大いに活躍できるようにと考えて設計しました。
      フォノイコライザーアンプはその面目躍如となるようなお役目ですが、
      使いこなすためにも、いくつか押させておきたい知識があります。」

  • RIAAカーブ
    フォノイコライザーとは、以下のRIAAカーブという周波数特性を持つアンプのことです。
    アナログレコードにはこの逆特性の信号が刻まれており、再生時にフラットになるように作られています。
    この周波数特性を得るには複数の方法があります。


 

  • 時定数
    RIAAフォノイコライザーの周波数特性を得るには3つの時定数が必要です。
    ロールオフ : 3180uS  ターンオーバー : 318uS  ロールオフ : 75uS

     
  • ゲイン(利得、増幅率)
    MMカートリッジの場合は40〜60dB(1kHz)くらい、
    MCカートリッジの場合はその+10〜20dBにすることが多いです。
    カートリッジの仕様書を良く読んで、適切なゲインを決めましょう。
    出力は2Vrms程度あれば充分でしょう。もう少し小さくても大丈夫です。
    また、RIAA特性は1kHzを基準とすると10Hzで+20dB、20kHzで−20dBとなることに注意しましょう。
    つまり、1kHzで40dBのゲインが欲しい場合には、総ゲインで60dBのアンプが必要になります。
     
  • 入力インピーダンス
    ALP−mkIIは入力インピーダンスの調整が容易な構造をしています。
    入力インピーダンスはカートリッジの負荷インピーダンスになります。
    下図の素子11−16とJP11、JP12で調整します。
    今回はバランス入力ですから、JP12はINVにセットします。



    MMカートリッジの場合は抵抗値は47kΩ、容量値220pF前後でチューニングされていることが多いです。
    容量値は抵抗器に並列に使い、高域ピークを抑えるために機能します。
    100〜470pFの範囲が良いでしょう。容量値を増やすほどにハイ落ちしたおとなしい音になる傾向があります。

    MCカートリッジの場合はとても多様なことになります。
    抵抗値は2Ωから1kオームくらいまで、高出力型で47kΩ負荷のものがあったりするので、仕様書で確認してください。
    容量値は10pFから0.01uF程度を使うことがあるようですが、容量は無くてもいいです。
    全体に、負荷インピーダンスを高くするとワイドレンジになりつつハイ上がりになる傾向があります。
    負荷インピーダンスを低くすると出力は小さくなり、フラットになりつつ、ややナローレンジになる傾向があります。
    是非とも愛用カートリッジのベストセッティングを見つけてください。

     
  • サブソニックフィルター
    レコードディスクが反っていたり偏芯していたりすると、カートリッジから振幅の大きな低周波が入力されることがあります。
    33回転だと0.55Hzか1.1Hz、 45回転だと0.75Hzか1.5Hzでしょう。
    これが全体にAM変調を起こし音に悪影響をもたらすことがあります。ヒドイときはウーファーがバタバタと動きます。
    この極低周波をカット(低減)するのがサブソニックフィルターです。
    カットオフ周波数を高くすると再生音への影響が大きくなるので出来るだけ低い周波数に設定したくなりますが、
    状況が悪い時には、カットオフ周波数を40〜60Hzくらいに設定しないと満足に効かないこともあります。
    入力にパッシブフィルターを使う、出力にパッシブフィルターを使う、アンプのDCゲインを下げる(アクティブフィルター)、
    等の方法があります。
     
  • ディスクリート初段回路について  こちら参照
    ディスクリート初段回路はALP−mkIIの大きな特徴です。
    ディスクリート回路の扱いは思ったよりずっと簡単ですので、尻込みせずに是非チャレンジしてみてください。世界が変わりますよ。
    ディスクリート初段回路は後日の増設も簡単にできます。
    その場合はR1,R2に1kR(もしくは0Rのほうが良いかも)を実装し、
    ディスクリート初段回路ブロックの他のパーツとレギュレーターの1号、2号は未実装でOKです。
    SW1〜3を 「 OPAMP 」 に切り替えて使用します。
     
  • オペアンプの交換について
    オペアンプの種類によって音質にはかなりの違いがありますので、 オペアンプの交換は音質のチューニングに重要なことです。
    ALP−mkIIでは単回路と双回路のオペアンプをどちらとも使うことができるので、市販のほとんどのオペアンプに対応できます。
    また、ALP−mkIIは単回路オペアンプと双回路オペアンプを同条件で使うことができるため、
    双回路オペアンプにありがちな音質上の不利がありません。
    オペアンプの交換にあたっては基板にICソケットを実装のうえ、パーツリストの指示に従って行ってください。
     
  • 電源について  ALP−mkIIの電源回路
    ALP−mkIIにとって電源は非常に重要なものです。
    電源システムのクオリティーが不十分だと、せっかくの高音質が発揮できなくなります。
    レギュレーターにはアリスのRegシリーズをお奨めします。
    三端子レギュレーター(7815、7915)でも動作可能ですが、本来の音質は発揮できません。
    繰り返しになりますが、電源には決して手を抜かないでください。
    ただ…、それでも低コストで使いたい場合はレギュレーターを取り付けずに使うことも出来ます。
    その場合は、レギュレーターの取り付け部のINとOUTをリード線などでジャンパーします。
    このときにはリード線がグランドにショートしないように注意しましょう。
    レギュレーター無しで使うときは、ALP−mkIIの電源入力へは±15Vの直流を供給してください。
     
  • 回路図と解説について  ALP−mkIIの全体回路と各部の解説
    回路図と各部の解説を一読することをお勧めします。

【 Phonograph EQ 05B: CR型 バランス入力 】

  • フルパッシブのCR型です。
     
  • MMカートリッジとMCカートリッジの両方に対応する汎用性の高いセッティングです。
    MMカートリッジのときはJP43にジャンパーピンを取り付けて下さい。(ONと呼びます)
    MCカートリッジのときはJP43からピンを取り外します。(NAと呼びます)
     
  • 音量調節が可能です。
    VRに10kR Aカーブの可変抵抗器を使うことで音量調整が可能になります。
    パワーアンプにダイレクトに接続するときに便利でしょう。
    音量調節機能を使わずに通常のフォノイコライザーとして使うときには、
    VRを全開で使うか、JP31をOFFにセットします。
     
  • ゲインはMMカートリッジ時40dB、MCカートリッジ時55dB。(1kHz)
    MCモードに固定したまま、音量調節で出力を小さくすることでMMカートリッジを使うという横着も出来ます。
    これが意外に便利。
     
  • バランス入力仕様。一部のターンテーブルには接続できません。
     
  • 入力インピーダンスの調整が幅広くできます。
    このセッティングでは入力インピーダンスを47KRから2.5Rまで幅広く変更できます。
    入力容量には120pF(100pF)と220pFを選択できます。
    MM、MC、低出力タイプMCなど多くのカートリッジに対応可能です。
     
  • サブソニックフィルターはパッシブ型を備えます。
    サブソニックフィルターを使うときはJP13とJP14をNAにします。
    無効にするときはONにします。
     
  • RIAA特性の時定数をチューニング可能です。
    レコードディスクのコンディションにあわせて時定数の微調整を行います。
    JP32をE35に切り替えてRx30で調整します。
    時定数を固定するときはE34に切り替えます。
     

※クリックするとPDFファイルが開きます。

※Co1−6はシステムのチューニングによっては無いほうが音が良い場合もあるので、
  試聴しながら取り付けや取り外しをするのも良いです。
  面倒な場合は最初から取り付けてしまいましょう。

※DC出力が気になる場合は出力にハイパスフィルターを使います。
  E51に10uF、E52に10kRを実装してください。
  E51に極性はありません。どちらかと言えば陽極を内側(オペアンプの出力側)にするとよいでしょう。

※オペアンプの安定性を調整するために位相補償コンデンサーを使うことができます。
  JP41をE44に、JP42をONにするとE43のコンデンサーが有効になります。
  無効にする場合にはJP41をE45に、JP42をNAにします。
  試聴しながら決めても良いでしょう。

※前段オペアンプブロックのDCドリフトが小さい場合はE37を0R(もしくはコンデンサーのリード間を直結)
  にしたほうが音が良くなります。

※VRを使わない場合は次のように変更したほうがS/N比が良くなります。
  但し、大きなコンデンサーはフィルター用には良質なものが少ないです。
  JP31:OFF
  E31:5.6kR  E32:1.1kR  E33:0.47uF  E34:680R  E36:0.047uF


【 Phonograph EQ 06B: ハイブリッド型 バランス入力 】

  • NF型とCR型を組み合わせたハイブリッド型です。
     
  • MMカートリッジとMCカートリッジの両方に対応する汎用性の高いセッティングです。
    ゲインの切り替えはJP41、JP43で行います。
    MMモードではJP41をE44に、JP43をNAにします。
    MCモードではJP41をE45に、JP43をONにします。
     
  • 音量調節が可能です。
    VRに10kR Aカーブの可変抵抗器を使うことで音量調整が可能になります。
    パワーアンプにダイレクトに接続するときに便利でしょう。
    但し、この方式は音量調整に伴って若干のRIAA偏差が発生します。
    実用上は問題のないレベルですが、イコライジング精度を追及する場合は以下のようにしてください。
    このセッティングでは音量調整が行えなくなりますが、精度とS/N比が向上します。
    (下記表との変更点)
    VR:無し 、 JP31:OFF
    31:3.3kR 、 32:110R  、 36:0.022uF

     
  • ゲインはMMカートリッジ時43dB、MCカートリッジ時55dB。(1kHz)
    MCモードに固定したまま、音量調節で出力を小さくすることでMMカートリッジを使うという横着も出来ます。
    これが意外に便利。
     
  • バランス入力仕様。一部のターンテーブルには接続できません。
     
  • 入力インピーダンスの調整が幅広くできます。
    このセッティングでは入力インピーダンスを47KRから2.5Rまで幅広く変更できます。
    入力容量には120pF(100pF)と220pFを選択できます。
    MM、MC、低出力タイプMCなど多くのカートリッジに対応可能です。
     
  • サブソニックフィルターはパッシブ型を備えます。
    サブソニックフィルターを使うときはJP13とJP14をNAにします。
    無効にするときはONにします。
     

※クリックするとPDFファイルが開きます。

※Co1−6はシステムのチューニングによっては無いほうが音が良い場合もあるので、
  試聴しながら取り付けや取り外しをするのも良いです。
  面倒な場合は最初から取り付けてしまいましょう。

※DC出力が気になる場合は出力にハイパスフィルターを使います。
  E51に10uF、E52に10kRを実装してください。
  E51に極性はありません。どちらかと言えば陽極を内側(オペアンプの出力側)にするとよいでしょう。

※前段オペアンプブロックのDCドリフトが小さい場合はE37を0R(もしくはコンデンサーのリード間を直結)
  にしたほうが音が良くなります。


 

ALP−mkIIのメインページへ

トップページへ