アリスのUSBパワードアイソレーター

 

アリス  「みみずく先生〜」

みみずく 「おや、アリス。よくきたね。」

アリス  「こんにちは、でーす。
      あれれ?みみずく先生がお料理なんて珍しいですね?」

みみずく 「ジャガイモが美味しい季節なんでね。肉じゃがを仕込んでいるんだ。」

アリス  「それはいいところへ参りました♪ふっふっふー♪」

みみずく 「是非、ご招待差し上げたいのだが、今はまだ無理なのだ。」

アリス  「えー?なんでー?もうほとんど終わってるじゃないですかぁ?」

みみずく 「煮込んだ後に、一度冷まして寝かさないといけないのだ。」

アリス  「あたしならすぐに食べちゃいます。随分手間をかけますね?」

みみずく 「このひと手間が違うんだよ。
      ジャガイモがもちっと締って崩れにくくなる。
      味もまろやかに整うし良くしみ込む。
      煮込んだままだと素材や調味料の味が分離していてどうもダメだ。」

アリス  「おばあちゃんの知恵的なお話ですね。」

みみずく 「明日には美味しくなっているからまた来るといい。
      ご馳走してあげよう。」

アリス  「やったー♪」

みみずく 「ところで、今日は?」

アリス  「あ、そうなんです。USBなんです。」

みみずく 「USB?PCのUSB?」

アリス  「はい、そうです。
      PCにUSBでつないで曲の製作に使っている機材があるんです。
      小さいし持ち歩けるから便利なんです。」

みみずく 「ふむふむ。」

アリス  「その機材は電源をUSBのみからとっているんですが、
      これを少し変えられないかなー?と思ったんです。」

みみずく 「ふーん。何かきっかけでもあったの?」

アリス  「いえ、きっかけって言うほどでもないんですが、
      仲間内で話してるときにPCの電源は良くないっていう話になりまして。
      スイッチングノイズやら何やらいろいろとノイズが多いんじゃないかって。」

みみずく 「まぁ、確かにPCの電源は大出力の電源システムを狭いスペースに詰め込む必要上、
      オーディオ的なクオリティを満たすのは難しい面はあるかな。」

アリス  「それで、フェライトコアやインダクターとコンデンサーを使って
      簡単な電源フィルターを組んでみたらそれなりに効果があったんです。」

みみずく 「お、チャレンジしてるねー。いいじゃないかアリス。」

アリス  「更に、いっそのこと別電源にしてみようとこんなことをやってみました。」

みみずく 「+5Vラインを外部電源から給電するんだね。
      ちゃんと動いたかい?」

アリス  「はい、動くには動きましたけど頑張った割には効果が少ないかなぁ?と思いました。
      それで、グランドや+D、−Dも完全に分離するのに何かいい方法はないでしょうか?」

みみずく 「なるほど。アリスがやりたいことは一言で言うとアイソレーションだね。」

アリス  「アイソレーション?」

みみずく 「そう、アイソレーション。
      この場合は、電気的に絶縁された状態でデータの送受信のみを行なうのが目的。
      アリスのイメージはこんな感じだろ?」

アリス  「はい、まさにそんな感じです。
      どうすれば出来るんでしょう?」

みみずく 「実はUSBのアイソレーションについては、
      専用につくられたADuM4160という良いICチップがある。
      データシートの図がわかりやすい。」

アリス  「図があるとわかりやすいですね。」

みみずく 「パルストランスを介してデータのみをやり取りすることで、上流と下流を絶縁しているんだ。
      このADuM4160は優秀で絶縁耐圧は5000Vもある。
      通信速度はUSB2.0の12Mbps(フルスピード)に対応している。
      正式名称はUSBデジタル・アイソレーターという。」

アリス  「小さいのに凄いですね。」

みみずく 「扱い方もとても簡単なものなので、今のアリスならすぐに使えると思うよ。」

アリス  「便利なものがあるんですねー。」

みみずく 「確か、いくつかストックしてたはず。使ってみるかい?」

アリス  「はい!ぜひとも!」

みみずく 「ちょっと待ってね…。ゴソゴソ…えーっと…あ、これだね。」

アリス  「表面実装部品なんですね。」

みみずく 「いまどきのパーツは表面実装品が多いね。
      これなんか大きい方だし実装は簡単だよ。
      DIPに変換する基板なんかも手に入るはずだ。」

アリス  「では、さっそく実験してみたいと思います。」

みみずく 「結果を楽しみにしているよ。」


〜翌日〜


アリス  「と、言うわけで、肉じゃがをご馳走になりに来ました。」

みみずく 「お、そろそろ来るんじゃないかと思っていたよ。
      さぁ、召し上がれ。」

アリス  「いただきまーす♪
      もぐもぐ…
      あぁ…おいしいですねぇー。新じゃがの季節ですねー。」

みみずく 「味がなじんでると塩味を薄くしても食べられるだろ?」

アリス  「はい、旨味と香りでいただけますね。
      もう一個、もぐもぐ…」

みみずく 「ところでADuM4160はどうだった?使ってみたかい?」

アリス  「はい、DIP変換基板があったのでそれにハンダづけして
      ブレッドボードで実験してみました。」

みみずく 「簡単だったろ?」

アリス  「拍子抜けするくらいに簡単でした。
      とっても簡単に使えるICチップなんですね。」

みみずく 「中身は複雑なんだけど、扱いやすく良く出来ている。」

アリス  「このICチップを使って面白いキットがつくれないかなって思うんですけど、どうでしょう?」

みみずく 「どんなものにしたいんだい?」

アリス  「せっかくなのでPCとUSB機器の絶縁(アイソレーション)のほかに、
      USB機器に良質な電源を供給するキットを作りたいと思っています。」

みみずく 「いいんじゃないかな?
      製作が簡単なわりに役に立つものになるかもしれない。」

アリス  「というわけで、みみずく先生もアイディアを提供してくれると、あたしとっても感謝します。」

みみずく 「それは構わないよ。私にも利用価値はありそうなキットだしね。
      しかし、実はあんまり難しくはない。」

アリス  「そうなんです。今回はすぐにも出来そうで、
      だから早くやってみたいんです♪」

みみずく 「では、さっそく検討してみよう。
      単刀直入に言うと、電源システムをどうするのかがミソ。
      まずはメーカー奨励の使い方を図で見てみよう。」

アリス  「ADuM4160の内部は3.3Vで動いているけど、
      5Vの電源を供給しても内蔵のレギュレーターが自動で働いて3.3Vを自身に供給するんですよね。」

みみずく 「そう、USBの下流に供給する5Vと電源を共有できるように設計されている。
      とても便利な機能だね。ところで、このようにすることもできる。」

アリス  「外部電源から3.3Vを直接供給するんですね。」

みみずく 「こうするとUSBの5V電源を独立して機能させることができるし、
      内蔵のレギュレーターよりも高性能な外部電源で+D、−Dのデジタルラインを駆動できる。」

アリス  「なるほど。それでは贅沢に3.3V、5Vの両方ともリニア電源を使うことにします。」

みみずく 「趣味的でいいんじゃないかな。」

アリス  「電流源にはスイッチング電源アダプターを使うのもお手軽でいいんですけど、
      電源トランスを使ったリニア電源というのもやってみたいです。
      DC入力とAC入力の両方にも対応したいです。」

みみずく 「それならお手軽ないい方法があるよ。
      トランス式の電源アダプターが千石電商に売ってる。」


http://www.sengoku.co.jp/mod/sgk_cart/search.php?cid=4017

アリス  「え?これは知りませんでした。」

みみずく 「いまどき骨董品みたいな製品だけど、今回の用途にはぴったりと合致する。
      この電源アダプターには電源トランスと整流ダイオード、
      ある程度の容量の平滑コンデンサーを内蔵してるから
      非安定の直流電流源として使える。
      今回使うのは9V800mAのものがいいだろう。」

アリス  「電源コンセントに挿せばいいだけだし、これはお手軽ですね♪」

みみずく 「良質な電源トランスと厳選した整流ダイオードには勝てないけどこの手軽さはありがたい。」

アリス  「では、さっそく回路を煮詰めていきましょー。」


〜しばらく経過〜


アリス  「いろいろやっているうちに回路図とアートワークまで一気に出来てしまいました。」

みみずく 「大変スピーディーにまとまったな。」


※パスコンは省略されています。

アリス  「電源にはminiReg2(+)opeReg(+)を実装できるスペースを設けました。
      もちろん三端子レギュレーターも実装できます。」

みみずく 「ちなみに一般のUSBの5V電源ラインは500mAが電流供給の上限。
      この回路ではそういった制限はない。」

アリス  「レギュレーターの限界まで使えますね。
      わたしの機材は1A消費するのでUSBケーブルを2本(二股Y字のもの)繋がなくてはなりませんでしたが、
      その必要がなくなりますね。」

みみずく 「1A程度まで供給できると何かと使い勝手が良いだろうね。
      さぁ、あとは工場に発注するだけだな。」

アリス  「出来上がりが楽しみです♪
      名前はUSBパワードアイソレーター(UPI−1)です。」


 

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