Tripath(トライパス) TA2020-020初段直結化 DCアンプ・スペシャル キット

※入力のカップリングコンデンサーを排除し、入力から出力まで直結化されたDCアンプになってます。

製作マニュアル(組立てと調整) その1

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【各種資料・目次】

 ・パーツリスト   ・パーツ個数表   (※non-NFB新セッティング ・パーツリスト  ・パーツ個数表 )
 ・シルクミス訂正   ・オプション機能の説明   ・組立ての指針   ・トロイダルインダクターの製作
 ・電源の組立て   ・電源の通電テスト   ・(本体の)組立ての方法   ・通電テスト   ・調整作業   ・配線図
 ・モードの変更(non−NFB⇒NFB)   ・モードの変更(NFB⇒non−NFB)   ・改造と注意点

 


アリス  「トライパスのキット。製作マニュアルがやっと出来上がりましたね〜♪」

みみずく 「いやー、時間かかっちゃったよ。やっぱり私がやると遅いね。」

アリス  「お疲れ様でした、みみずく先生。」

みみずく 「アリスには写真の撮影と編集をやってもらったから助かったよ。」

アリス  「写真があった方がわかりやすいですもんね。」

みみずく 「さて、さっそく説明に入ろう。まずはシルクミスの訂正から。」


【シルクミス訂正】

アリス  「写真を御覧ください。」

みみずく 「フィルムコンデンサーC61が2つあるようになってますが、片方をC62に訂正してください。」

 


【オプション機能の説明】

アリス  「機能拡張用のオプションですね。」

みみずく 「オプション機能は標準ではパーツが用意されておらず、ユーザーの必要に応じて選択できます。
      2つの機能を搭載しました。@バスブースト回路 と A高周波吸収用ダンパー回路です。」

  @バスブースト回路(後述のNFBモード時でのみ使用できます。)
   1チャンネル:R41、C39、C40
   2チャンネル:R34、C35、C36

   Rはバスブーストの増幅量を決めます。大きな抵抗値にするほど増幅量が増えます。R=100kΩ、120kΩ、150kΩ等
   Cはバスブーストの周波数を決めます。設定周波数より低い周波数が全て増幅されます。
   大きな容量値にするほど設定周波数が下がります。0.01μF+2200pF、6800pF×2等

   お使いのスピーカーに合わせてお好みにチューニングしてください。

   ※バスブースト機能を使用しない場合、もしくは搭載しない場合は
    ジャンパーポスト「BASS BOOST」をジャンパーピンでショートさせておくことで機能を無効化できます。

  A高周波吸収用ダンパー回路(ゾーベルフィルター)
   1チャンネル:R51、C42
   2チャンネル:R50、C41

   必要であれば高域のチューニングに使用してください。2k〜3kΩ+1000pF、330〜1kΩ+0.01μF等


【組立ての指針】

  電源の組立て ⇒ 電源の通電テスト ⇒ 直結回路の動作モードの選択 ⇒ 組立て ⇒ 動作テストと調整

みみずく 「組立ての基本的セオリーとしては、抵抗やダイオードのような背の低い部品から順番に取り付けていくのがよいでしょう。」

アリス  「逆にやってしまうと部品の取り付けが面倒になってしまいますよね。」

みみずく 「こういった複雑な回路の場合は電源から先に組み立ててテストすることが非常に重要です。
      電源の組立てが間違っていた場合には下流のパーツを破壊してしまう可能性が高いし
      その際の修復は困難を極めるからです。」

アリス  「大きな事故にも繋がる可能性があるので電源には特に注意を払ってくださいね。」

みみずく 「電源の組立てとテストが終わったら次の段階へ進むわけですが、ここでひとつ選択肢があります。
      入力直結回路として機能するプリアンプの動作モードを決定します。」

アリス  「non−NFB(無帰還)モードとNFB(負帰還)モードの選択ですね。本キットの大きな特徴でもありますね。」

みみずく 「non−NFBモードからNFBモードへの変更が最も簡単なので、いろいろ試したい場合には

      non−NFB ⇒ NFB ⇒ non−NFB

      の順序で作業することをお勧めします。
      それぞれの変更方法は別に解説します。
      もちろん、いきなりNFBモードで組み立ててもかまいません。」

アリス  「それぞれ、ユーザーによる調整箇所がありましたよね?」

みみずく 「組立てが完了したら、調整に入ります。
      non−NFBモードでは2箇所、NFBモードでは4箇所の調整が必要になります。
      調整はnon−NFBモードの方が容易です。NFBモードはやや難度が高いです。
      調整法も別に解説します。」

アリス  「全て上手くいけば完成ですね。苦労が報われる瞬間です。」

みみずく 「とにかく、ゆっくりで良いので、間違えずにひとつひとつ確実にパーツを実装してください。
      間違いやハンダ不良などがあると後から問題点の発見・対処をすることは、たとえ設計者であっても、とても大変なことです。」

アリス  「早く完成させたい気持ちはとてもよくわかりますけど、どうかあせらないで丁寧に作業してくださいね。」

 

〜追記事項〜

アリス  「non-NFBモードで組み立てた場合に、使用するスピーカーによっては残留ノイズが気になるというご報告をいただきました。」

みみずく 「non-NFBモードは負帰還を利用しないために、もともとNFBモードよりも残留ノイズについては不利な側面があります。
      このキットではモードの切り替えを簡単にできるように配慮した結果、non-NFBモードに最適化されていないことも要因でしょう。」

アリス  「と、いうわけで残留ノイズ低減のためのnon-NFBモード新定数です。」

変更箇所
 R18、19、24、25 ⇒ 1kΩ
 R20、23 ⇒ 750Ω
 R35、40 ⇒ 47kΩ
 R42、47 ⇒ 68Ω

アリス  「この定数では残留ノイズが聴感上で半分くらいになります。」

みみずく 「ただし、NFBモードへの変更はできなくなるのでご注意を。」

 

〜追記事項〜

アリス  「non-NFBモードの新セッティングを公開します。
     大変音が良いセッティングなので是非ためしてみてくださいね♪
     組立て完成済み基板はこのセッティングです。
     組立ての手順は製作マニュアルと同じです。
     J−FETの選別作業を行なう方はこちらを参考にしてください。」

non-NFB新セッティング ・パーツリスト  ・パーツ個数表


【電源の組立て】

 必要なパーツ
   R1〜4、R9〜15、R58〜62、R64〜74
   D1〜5、D18
   C33、C34、C43、C52、C53
   Q1〜4、Q21〜29
   2SK30 : 5個
   TL431 : 5個
   端子台 : 1個
   フェライトビーズ : 2個
   銅線(フェライトビーズ取り付け用) : 1本

 実装例

 電源部 全体像
 

 

 直結回路(プリアンプ)の電源(+V1、+V2)です。
 フィルム・コンデンサーの表記は 0.01μF=10nF=103 です。
 
 

 トライパスのパワー電源(+Vp)です。
 ダイオードとトランジスターの向きに注意してください。
 
 

 トライパスのアナログ電源(+Va) と デジタル電源(+Vd)、並びにマイナス電源(-V)です。
 フェライトビーズも実装されています。
 フェライトビーズは絶縁体で電流は流れないため、他の部品や電極に接触しても特に問題ありません。
 LEDの向きに注意してください。切り欠きがある方が写真右側を向いています。
 写真では実験のためパワートランジスターがソケットで実装されています。
  


【電源の通電テスト】

 電源ユニットと下図のように結線してください。
 通電直後にLEDが点灯するかどうか確認します。
 点灯しない場合は、何か異常があります。
 すぐに電源を切って確認してください。
 

LEDが点灯したら、すばやく抵抗やトランジスターに触れてゆきます。
この段階で熱くなったり煙が出たりしたら異常があるのですぐに電源を切ります。
特に異常がなければ測定に入ります。
1kオームの抵抗器を一本使います。

 電源を作動させるために1kΩを写真の場所にクリップしておきます。
 抵抗のリード線が基板の裏でショートしないように注意します。
 写真では+V1(プリアンプ1)の電圧を測定しています。15〜15.5Vであれば正常です。
 

 続いて+V2(プリアンプ2)の測定です。正常値は15〜15.5V
 

 +Vp(トライパス パワー)の測定。正常値13〜14V
 

 +Vd(トライパス デジタル)の測定。正常値は4.7〜5.3V
 

 +Va(トライパス アナログ)の測定。正常値は4.7〜5.3V
 

 -V(マイナス電源)の測定。正常値は−2.8〜−3.2V

 

電源の通電テストは無事にクリアできましたか?

おめでとうございます。これで一安心です。

電源を切って、電源ユニットを外してください。


【トロイダル インダクターの製作】

トライパスはD級アンプであるため出力フィルターが必要です。

本キットでは出力フィルターに使用する高性能のトロイダル・インダクターをユーザーに自作していただきます。

 使用するトロイダル・コア : T68−2 (AL値=5.7)
 

 このコアにφ0.5oのポリウレタン被服銅線(UEW)を巻いてゆきます。
 約90pの銅線を4本用意します。
 

 必要な10μH(マイクロヘンリー)を得るために42ターン巻きます。
 穴の中を1回通過するごとに1ターンと数えます。
 この写真では5ターン巻かれています。
 

 ちょうどぴったり巻けます。
 巻線の間隔を出来るだけ等しくすると、コア内部の磁束密度が均一になるため性能が上がります。
 

 巻き終わったら銅線を抵当に切って、カッターナイフなどでポリウレタンの絶縁被膜を丁寧にはがしておきます。
 

 予備ハンダをして完成です。実は重要な作業です。
 

 

参考までに、T68−2(大きさT68で♯2材のコアと言う意味)のインダクタンスLは次の式で計算できます。
Nは巻きターン数です。

L(μH)=5.7×N^2÷1000  (N^2はNの二乗、N×Nと言う意味)

これを応用すれば出力フィルターのセッティングを変更することが出来ます。


 

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