Alice In Underground (アリス・イン・アンダーグラウンド)

〜アリスの地下研究室〜

 


【 目 次 】


【 中級コース : RaspberryPi を改造してみましょう。 】

RaspberryPiを使用したオーディオシステムは、ローコストであるにもかかわらず非常に高いポテンシャルを備えています。
多少の勉強は必要となりますが扱いは簡単で、工夫次第で大変な高音質が得られる可能性を秘めています。

アリス 「Raspberry Pi は小型の汎用PCです。
     クレジットカードよりも少し大きいくらいのサイズで、PCとしての基本的な機能を網羅しています。
     ディスプレー、キーボード、マウスをつないで普通に使うことができます。
     処理速度に制限はありますが、このようなものが低価格で入手できるのはすごいことです。
     全世界で500万台以上出荷されているそうで、ホビー用としては桁違いに普及していると言えます。

     また、RasPi には音楽再生用のOSも提供されているので、
     コンピューターリソースを有効に使った無駄のないPCオーディオシステムを構築することができます。
     有線LANはもちろんのこと、WiFiなどの無線LANを使えば、
     家中どこにいても高品質な音楽再生を可能とするネットワークオーディオをローコストで実現できます。
     ハイレゾ再生にも対応できるのが嬉しいですね。

     RasPiはPCとしては消費電力がとても小さいので、大掛かりな電源が必要ありません。
     そのため、PCのリニア電源化が比較的簡単に実現できます。
     これも見逃せないメリットです。

     さぁ、それでは本気で遊んでみましょう。」
 

アリス 「というワケで、RaspberryPi 2B を入手しました。
     音楽専用OSのVolumioをインストールすると、いとも簡単に音が出ました。
     少々下調べや設定は必要ですが、この手のものとしては驚くほど簡単です。びっくり。」

アリス 「基板のパターンを追いかけて回路を読んだところ、RasPi 2B の電源システムは次のようになっています。
     新たに RasPi 3B も発表されましたが電源ラインの構造は2Bと同様なようです。」


アリス 「5Vの外部電源から、基板上のスイッチングレギュレーターで3.3Vと1.8Vを生成する仕組みになっています。
     スイッチングレギュレーターのキャリア周波数は1.5M〜1.8MHzです。

     RasPiの内部電源はスイッチングレギュレーターですが、そのおおもとの外部5V電源の品質によっても影響を受けます。
     こういったことは実験で確かめてみるのが一番です。

     そこで、外部の5V電源をスイッチングアダプターからリニア電源に変更して試してみることにします。」


アリス 「実験のために、安価につくれて効果的なリニア電源を考えていて、
     そういえばと、以前につくったUSBパワードアイソレーターのUPI−1を活用できることに気づきました。
     UPI−1には整流回路、リニアレギュレーター、USBコネクターなど必要なものを一通り載せられますから、

     電源トランスを繋ぐだけで簡単にUSBリニア電源を製作できます。

     実際にやってみたところ10分程度でUSB電源アダプターをつくることが出来ました。
     リニアレギュレーターには電圧の安定性を重視してopeReg(+)#Sを使いました。」
      ※LED.Reg系を使うときは電圧の安定性の観点からRBT−1RM−1を使ったほうが良いです。


アリス 「さて、実際の効果の程ですが、思っていた通りリニア電源はしっかりと効果があります。

     スイッチングレギュレーターと比べるとリニア電源の方が音に芯が通って勢いとノリが良くなります。
     ドライブ感が出てくる、とでも言うのでしょうか。
     RasPiのヘッドフォン出力(イヤフォン出力)はややノイジーですが、それでも充分に音質の向上を体感できます。」


アリス 「このUSBリニア電源はRasPiの音質向上に効果的だったので、UPI-1の基板在庫分のみですが、
     パーツ一式を同梱したキット頒布をいたします。
     UPI-1は在庫処分中なので安価に提供可能です。」

RasPi 用 USBリニア電源 在庫限りサービスセット →こちら

 

〜 しばらく経過 〜

 

アリス 「さー、それではいよいよアリスのRegシリーズを使ったRasPiのフル・リニア電源化をやってみたいと思います。
     RasPiのパーツのうち、いくつか撤去が必要なものがあります。下の図を見てください。

アリス 「実際に撤去するパーツはこちらです。チョークインダクターが2つと、スイッチングレギュレーターICが1つです。」

アリス 「それで、実際にやってみたんですが、ハンダゴテでインダクターを外すのは結構大変でした。
     作業に時間をかけすぎるとハンダゴテの熱で基板が傷んでしまいます。
     ですので、ニッパーでインダクターのフェライトを砕いてしまうのが簡単だと思います。
     フェライトは脆いので簡単に砕けます。破片が飛び散るので布かティッシュで軽く抑えながら砕くといいでしょう。
     そのときに基板の銅箔ランドをニッパーで傷つけないように注意しましょう。

     おおまかに撤去が済んだら、ハンダゴテで溶かしながら残りかすを除去します。
     スイッチングレギュレーターICもリードをニッパーで切断すれば簡単に外せます。
     ICのリードパターン部分がハンダカスでブリッジしてショートしないように注意しましょう。
     ハンダフラックスを塗ってジュッとやると簡単ですよ。

     ルーペやデジカメのマクロモードの接写を利用してショートの有無をしっかりと確認しましょう。
     撤去作業するときには熱で壊れないようにSDカードは取り外しておきましょう。」
 

アリス 「取り外すとこのようになります。」

アリス 「用意するリニア電源は 5V  3.3V  1.8V の3種類です。それぞれ最大容量で1Aもあれば仕様上充分のようです。」

→ RasPi 2B で消費電流を実測してみました。

条件 : レギュレーターは全てLED.Reg3(+)を使用。RasPi 2B から外部へは電源を供給しない。

1.8V  約210mA

3.3V  約160mA

5V    約160mA

再生ソースのサンプリング周波数やビット深度に応じた変化は無し。
思ったほど電力は食わないですねー。
 

アリス 「それぞれの電源の供給場所です。よく確認しておきましょう。
     ここに給電配線をハンダ付けします。
     グランドの配線は強度のあるMicroUSBコネクターのスリーブを利用します。」

アリス 「5Vは RasPi のJ8(拡張コネクター)の2番か4番ピンを使って給電します。グランドは6番ピンです。
     ピンの裏に配線をハンダ付けするといいでしょう。」

アリス 「配線をハンダ付けしました。」

アリス 「ランドにストレスがかからないように注意しながらツイストして、念のためインシュロックタイで固定しました。
     ちょっと引っ張るとプリント基板のランドはいとも簡単に剥がれるので注意してください。」

  

アリス 「次に、リニアレギュレーターを組み立てて出力電圧の調整などを行いました。
     各電源のRM−1pは最大電流2.5A程度でセッティングしました。」

アリス 「これらを RasPi につないで動作テストをしてみましょう。
     …よぉーっし、各部に間違いありません。
     壊れませんように(祈り)。スイッチオォォォォオオオンッ!

     …っ!? あれっ!? 動きません。

     RasPiの赤と緑のランプが点灯したままで、他には何も起こりません。
     あれれ?

     ……これは困ったなぁ……と思ったら5Vの配線をしていませんでした。あ〜、焦りました。
     さて、5Vを配線して、もう一回ちゃんと確認してと。
     いざ、今度こそ。ままよ。スイッチオーーーーーーン。

     ………おー、今度は動きました。良かった。
     Volumioでもアクセスできるので問題なく稼働したようです。
     数時間放置しても動作におかしなところは無いですね。」

アリス 「どうやら使えそうなことがわかったので、早速このようにシステムを組んで音を聴いてみることにしましょう。
     さぁさぁ、どうなるでしょう?楽しみですねぇー。」

アリス 「DACのセッティングもオーケーですね。
     他、各部も見たところ問題無し。
     よーし、電源入れましょう。…正常動作確認。Volumioも立ち上がりました。
     お気に入りの曲を書き込んだUSBメモリーをRasPiに接続してと…
     …ちゃんと認識されましたね。
     よしッ!準備完了!

     さー、聴いてみましょう♪」

 

     …

 

     おぉー

 

    ………

 

     …ふむ

 

     ………

 

     へー

 

     …これは、これは。

 

アリス 「うーむ。これは素晴らしいですね♪
     とても可能性を感じます。
     RasPiが音楽再生システムとして、自作家の間で高評価なのも、うなずけます。」
 

アリス 「空間の表現力や、空気の響きのようなものがとても豊かです。
     芯のしっかりとした存在感のある音がとても良いと思います。
     リニア化したことで、耳をつんざくような乱暴な音がかなり丁寧になります。
     粒子感が細かくなるというか、滑らかになるというか、
     PCのリニア電源化ってやっぱり効果があるんですねー。」

 
アリス 「ところで、比較実験のためにも、スタンダードなリニア電源である
     電圧固定タイプの三端子レギュレーターICやLM317系もこの辺で試してみましょう。
     LM317は一種類で1.8V、3.3V、5Vのすべての電圧を賄えるので便利ですね。
     電圧固定タイプは部品点数が少なくお手軽ですが3種類そろなきゃいけません。
     いずれにしてもディスクリートレギュレータほどの面倒はありませんが…

     さて、あっという間に出来てしまったのでさっそく聴いてみましょう。

     ………………

     …なるほど。レギュレーターICを使ったリニア電源でも音質の改善効果はあるようですね。
     ディスクリートレギュレーターと大した違いが無かったらどうしよう…と、ちょっと不安だったんですが、
     音質はディスクリートレギュレーター(アリスのRegシリーズ)の方が明らかに魅力的に聴こえたのでひとまずホッとしてます。
     とは言え、コストの差がかなりありますから、レギュレーターICによるリニア電源も充分に有益な選択肢だと思います。」

 
アリス 「それにしてもリニア電源駆動のRasPiの音はとてもいいですね。
     アリスのRegシリーズとの相性もとてもいい傾向です。大変素性が良い。
     明らかにもっと良くなりそうなので、さっそくチューニングをしてみましょう。」

  • Volumioは情報処理のセッティングを変更可能です。"Sound quality tweaks"などいじってみましょう。
  • 電源のパーツ交換は音に大きな影響があります。積極的に試してみましょう。
  • レギュレーターの定数変更など試してみましょう。パーツ交換すると定数の最適値が変わることがあります。

 

〜チューニング続行〜

 

アリス 「おぉーーーーいいぃーーですねぇぇぇぇえええーーーーーーーっ!♪
     チューニングにビシバシ応えてくれます。反応いいですね RasPi 。
     これはカワイくなってきました。いいマシンですRasPi♪

     1.8Vと3.3Vが音に影響ありそうなのは予想していたんですが、5V電源もかなり影響があります。
     5Vには最初はminiReg2(+)を試したんですが、最終的にはLED.Reg3(+)に落ち着きました。」

同様の一式セットを用意しました。
改造 RaspberryPi 2B or 3B 専用ディスクリート・リニア電源キットセット
→上級セットに変更になりました。

 

アリス 「ふーむ。かなり良くなりましたよ。
     私の力作の愛機DACよりも良くなっちゃうかもしれないですね…
     嬉しいような、寂しいような…
     そろそろ世代交代なのかしら…

     それにしても、こんなにカンタンに良い音が手に入るとは本当にスゴイ世の中になったものです。

     ハイレゾ再生にも充分に使えますし、これはかなり遊べますね♪」

 

上級コースに続きます。

 


 

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