アリスのケミコン・ボードの巻 その1

 

アリス  「こんにちは〜、みみずく先生〜、また来ました〜。」

みみずく 「やあ、アリスよく来たね。このまえ言ってたギターの改造は上手くいったかい?」

アリス  「うん、半田ごての使い方がまだまだだけど、コンデンサーや抵抗によって音がころころ変わるのね。とっても面白かった。」

みみずく 「それはよかった、まあ、半田ごては慣れも大きいからね。」

アリス  「あ、ところでね、みみずく先生。」

みみずく 「なんだい。」

アリス  「今日はコンデンサーのことについて聞きたいの。」

みみずく 「いきなり奥深いところにアプローチするね。で、何が知りたいんだい?」

アリス  「たとえば、100μFと10μFのコンデンサーを並列につなぐと…、」

みみずく 「うんうん。」

アリス  「110μFのコンデンサーになるんでいいんですよね?」

みみずく 「まあ、そうだね。」

アリス  「高校物理でもそう習いました。ところで、コンデンサーのことを調べていると、こんなHPがありました。」

みみずく 「なになに…、『470μF、4700μFの2種類のコンデンサーを搭載することで、低回転〜高回転のそれぞれのエンジン回転数に
      応じて点火プラグや電装品に安定した電力を供給します。装着の効果:トルクアップ・レスポンスアップ・ヘッドライト照度の
      安定&向上・燃費向上…』」

アリス  「あ、その辺まででいいです。」

みみずく 「なんだい、これは?」

アリス  「コンデンサーでググると、クルマの『コンデンサーチューン』っていうHPにたくさんヒットするんです。ギターとは関係ないけど、
      面白そうだから少しみてみました。」

みみずく 「アリスはクルマの燃費改善をしたいのかい?」

アリス  「いえ、そうではないんですけど…、気になったのは『470μF、4700μFの2種類のコンデンサーを搭載すること』に
      どんなイミがあるのかなってことです。」

みみずく 「アリスはどんなイミがあると思う?」

アリス  「えーっと…、静電容量の大きさは器の大きさみたいなものだから470μFの方が電荷の出し入れが4700μFよりも速くって?
      電荷の出し入れによる電圧の変動は4700μFの方が小さくって?でも、並列に接続されているってことはそれぞれのコンデンサーの
      極板間にかかる電圧は等しくって???…あーん、わかりません。」

みみずく 「いい線いってるよ。」

アリス  「?」

みみずく 「いま話題にしているのはコンデンサーのキャパシタンスのはなし。ところが、現実のコンデンサーはキャパシタンスだけで
      出来ているわけではない。実際のコンデンサーはどんな構造をしているかな?」

アリス  「誘電体(絶縁体)を極板でサンドイッチにしたものを重ね合わせたり、巻いたりして、そこからリード線を2本引き出した構造を
      していると思います。」

みみずく 「そうだね、電解コンデンサーなんかは、ほとんどがぐるぐると巻いてある。ということは、比較的大きなインダクタンスを持つ。
      実際にはリード線のような直線の導体にもインダクタンスがあるし、電気抵抗だってある。アリス、インダクタンスって何だったかな?」

アリス  「えーっと…。電流が流れると磁界が発生する。電流の変動に伴って磁界の強さも変動するが、このとき磁界の変動を打ち消すような
      逆起電力が発生する。その性質の強弱をインダクタンスと呼び、電流の変動に対して、ちょうど重さのあるものが慣性を持つように
      ふるまう。インダクタンスが大きければ、電流を止めようとしても流し続けようとし、流そうとすると流さないようにしようとする。でしたっけ?」

みみずく 「大体そんなところかな。ここで重要なことはね、コンデンサーは抵抗やインダクタンスを介して他のコンデンサーと繋がっている、
      ということ。」

アリス  「つまり、完全な並列ではない、ということですか?」

みみずく 「そういうことだよ。アリスはその場合、どんなことが起こると思う?470μFのコンデンサーと4700μFのコンデンサーを並列に
      つないだものを、いま、乾電池に繋ごうとしているとする。さあ、どうなる?」

アリス  「同時に両方のコンデンサーに電流が流れ込み始めて…、小さいコンデンサーのほうがチャージによる極板間電圧上昇が早いから
      逆電圧によってチャージ電流が少なくなって…、大小のコンデンサー間の電流に差ができることをきっかけにして…、
      リード線の抵抗成分による電圧降下に差が出たり、インダクタンスによる逆電圧の発生に差が出たり…。最終的には、
      両方のコンデンサーの極板間電圧が電池の電圧と等しくなったところで電流の流れは止まります。」

みみずく 「そう、正解かどうかではなく、そういうイマジネーションを常に持つことが大切だ。」

アリス  「本当のところはどうなの?みみずく先生?」

みみずく 「正確なところはわからないことも多い。」

アリス  「え〜っ、なにそれ〜。」

みみずく 「ともかく、並列にしたコンデンサーは最終的にはそれぞれの静電容量を足し合わせたひとつのコンデンサーと同じにはなる。
      しかし、動的な状態、つまり充放電が不規則に行われている状態だな、そのときには足並みがそろっていない可能性がある。
      実際に並列に接続されたコンデンサーが期待通りに働かない、ということはよくあって、そういう現象は共振による障害が
      起こっているものだと考えられる。直列共振や並列共振が複雑に組み合わさったものだね。
      これが起こるとコンデンサーとしての能力が一気に低下して、さらに、おうおうにしてとんでもない振る舞いをしはじめる。」

アリス  「う〜、面白いけど、難しくなってきました…。」

みみずく 「ははは、こういうところはね、製品開発でも試行錯誤の多いところなんだよ。理論ではなく現物を相手にしているんだってことを
      実感するところさ。経験を積むと面白くなってくるんだよ。」

アリス  「コンデンサーの並列化はやめたほうがいいの?」

みみずく 「そんなことは無いよ。特に電解コンデンサー(ケミカルコンデンサー、ケミコン)の場合はあんまり鋭い共振を起こさない場合が
      ほとんどだから。」

アリス  「どうしてですか?」

みみずく 「うーん…、そうだね。それじゃあ、今回はそれを君の宿題にしよう。アリス。」

アリス  「はーい、がんばってきまーす。」

みみずく 「それじゃあ、また。」

アリス  「今日もありがとうございます、みみずく先生。」

 

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