アクティブ・アッテネーターは、なんちゃってプリアンプの夢をみるか?の巻き

【 アリスのプリアンプ with アクティブ・アッテネーター 】

 

アリス  「プリアンプがつくりたいです!」

みみずく 「どうしたんだいアリス?いきなり。」

アリス  「いま、言いました。あたし、プリアンプがつくりたくなったんです。」

みみずく 「いったい、どうしてまた?」

アリス  「プリアンプを使うと音が良くなるんだそうです。」

みみずく 「ふーん、そうなんだ。」

アリス  「とにかくオモシロそうだからやってみたいんです。」

みみずく 「まぁ、いいんじゃないかな。アリスの勉強にもなるだろうしね。」

アリス  「それに、プリアンプって名前がカワイイじゃないですかぁ?」

みみずく 「確かにプリッとした名前ではある。
      それで、どんなものを考えてるんだい?」

アリス  「今回はオペアンプで遊んでみたいんです。」

みみずく 「ふむ、オペアンプでね。」

アリス  「ギター用のエフェクターの改造をやってたときに、オペアンプの交換をしたことがあります。
      そのときに、いろんなオペアンプを交換して試してみたんですけど、けっこう音が変わって楽しかったの。
      オペアンプもいくつかストックがあるから、それを使ってみたいなって。」

みみずく 「なるほどね。確かにオペアンプによって音はかなり違うね。
      それに、オペアンプを使えばカンタンだし、手軽に楽しむにはもってこいだな。
      コンパクトにつくることもできるし、やりようによっては面白いんじゃないかな?」

アリス  「せっかくなら音の良いものにしたいんです。一緒に考えてもらえたら、とっても感謝します。」

みみずく 「それじゃあ、音が良くなりそうな、遊びのための工夫を考えてみようじゃないか。」

アリス  「やったー♪」

みみずく 「まず、オペアンプの使い方としてよくあるのは、こうだね。
      とりあえず現代風に、入力にはDACを、出力にはパワーアンプを想定してみた。」

アリス  「VRで入力の音量調整をして、NF1、NF2でアンプの増幅率を決めるのね。」

みみずく 「そうだね。これをベースに、まずは入力から考えていこうか。
      プリアンプの入力にはDACの出力アンプとラインケーブルがつながっている。」

アリス  「はい。」

みみずく 「ここで、入力インピーダンスと出力インピーダンスということを知っておいた方がいい。
      アリス、インピーダンスって何だったかな?」

アリス  「インピーダンス『』とは、交流における電気抵抗のような概念です。単位はΩ
      電気抵抗『』は導体の熱損失によって電圧降下を発生させますが、
      インピーダンスは電気抵抗とキャパシタンス、インダクタンスの相互作用により
      電圧降下を発生させている点が異なります。
      電圧降下の全てがロスとして熱に変わるわけではありません。」

みみずく 「おぉ、なかなか鮮やかな説明じゃないか。」

アリス  「えへへ♪ケミコンボードをつくったときの勉強のおかげです♪」

みみずく 「ところで、アンプやマイク、スピーカー、レコードのカートリッジやピックアップ、など、
      そういった電子機材には、信号の入力や出力が備えられている。
      そして、入力と出力には電流の流れやすさ、流れにくさの度合いがあって、
      それを入力インピーダンス、出力インピーダンスと呼んでいる。」

アリス  「マイクに出力インピーダンス600Ωって書いてあるアレですね?」

みみずく 「まさに、それだね。
      さて、例えば、DACの出力インピーダンス『Zout』が比較的高い場合に、
      その信号を受けるプリアンプの入力インピーダンス『Zin』が低いと、
      信号ラインにたくさんの電流が流れて、Zoutでの電圧降下(内部損失)が大きくなり
      Zinに充分に信号が届かなくなる。」

アリス  「それは困るわ。」

みみずく 「だから、DACのような前段の機器にとっては、
      プリアンプにできるだけ高いインピーダンスで信号を受け取って欲しいという事情がある。
      さらにいうと、出力インピーダンスはラインケーブルの静電容量との関係で
      ローパスフィルターを形成している。
      だから、出力インピーダンスが高めのときに長いラインケーブルを使うと高域がみるみる減衰する。」

アリス  「短めのラインケーブルを使って高めのインピーダンスで受けてあげるといいってことですよね?」

みみずく 「そういうことだね。
      もちろん、低い出力インピーダンスを持つ機材であれば最初からこういった問題は起こらない。
      …んだけど、出力素子や電源システムの能力の問題もあって実際には意外に能力が限られていることも多いんだ。
      まぁ、そもそも、こういったところを補うのが現代のプリアンプの役割だったりもする。」

アリス  「その、『現代のプリアンプ』に期待です♪」

みみずく 「ところで、入力インピーダンスを高くするにはどうしたらいいと思う?」

アリス  「え?…えーっと、オペアンプの入力インピーダンスはかなり高めだから、
      事実上、VRの全抵抗値がプリアンプの入力インピーダンスということになります。
      だから、VRに1MΩくらいのものを使えば、
      かなり入力インピーダンスを高くできると思います。」

みみずく 「そうだね。まずはそう考える。
      ところがその場合、新たな問題が現れる。」

アリス  「カンタンには行かないものね。」

みみずく 「オペアンプには入力容量というものがあって、
      これがVRの分圧抵抗とローパスフィルターを構成してしまう。
      だから、高抵抗値のVRを使うと高域信号が劣化しやすくなる。
      また、ノイズ性能の点からも入力に直列の高抵抗は好ましくない。」
      (ココロの声:ただ、内部がカスコードになっていて入力容量のキャンセルが行なわれていたり、
       オペアンプによってはローパスフィルターで高周波をカットする方が良い場合があったりと一概には言えなかったりもする。)

アリス  「こういう場合には、どんな方法があるの?みみずく先生?」

みみずく 「そうだね、例えば解決策としてはこんな方法があるよ。」

アリス  「もうひとつオペアンプを使うのね。」

みみずく 「こういう形式をアクティブ・アッテネーターという。」

アリス  「入力信号をオペアンプのハイインピーダンスの入力で直受けしているのでRin=Zinなうえに、
      Rinに高抵抗を使っても入力容量と直列に入らないために高域の劣化が起こらないんですね。」

みみずく 「しかも、OP1〜VR〜OP2を短距離で結線できるために、
      ラインケーブルの静電容量の影響を受けずにOP1がVRをダイレクトにドライブできる。
      そうするとOP1のNFBの効果がVRにききやすくなるので、
      VRに抵抗値の低いものを使用しても良好な性能を維持できる。
      これはOP2の入力のノイズ特性にとって有利に働く。」

アリス  「アクティブ・アッテネーターは入力インピーダンスを高くした上に高域の劣化を防止できる
      優れた音量調整の方法だということですねー。」

みみずく 「そういうことさ。
      さあ、次はプリアンプの出力について考えてみよう。」

アリス  「出力についてはできるだけローインピーダンスで送り出す方がいいんですよね?」

みみずく 「そうだね。プリアンプの出力インピーダンスはできるだけ低い方がいい。
      むしろ、どれだけ低いのかが勝負だといっても良いくらいだよ。
      そうすると、長いラインケーブルを使ったとしても容量負荷に負けずに、
      立ち上がりの良い信号をパワーアンプへと届けてくれる。」

アリス  「わくわく。それで、次はどんな工夫をするんですか?」

みみずく 「じつは、多くのオペアンプには10kHz以上の高域で出力インピーダンスが上昇する傾向がある。
      高い増幅率で使うほどにこれは顕著になる。
      そこで、それを補うなうためにこんなことをしてみる。」

アリス  「出た!やっぱりディスクリート・トランジスターを使うんですね!」

みみずく 「だって、ディスクリートにも出番がないと、さみしいだろ?」

アリス  「あたしはディスクリート歓迎ですよーん。」

みみずく 「まあ、気分だけでやっているわけではない。
      出力インピーダンスを下げる目的で使うこのようなアンプをバッファーアンプというんだが、
      ディスクリート素子を使えば優秀なバッファーアンプをつくりやすい。」

アリス  「ディスクリート・バッファー・アンプがラインケーブルの容量負荷や
      パワーアンプの入力インピーダンスをパワフルにドライブしてくれるから、
      音の劣化やヘタリをかなり防いでくれるハズ、というわけですね。」

みみずく 「目論見としてはそんな感じだよ。」

アリス  「これでプリアンプの骨子はできましたね。」

みみずく 「それじゃあ、具体的に細かい仕様をつめていこうか。
      アリスは何か搭載したい機能はあるかい?」

アリス  「1回路入りのオペアンプと2回路入りのデュアル・オペアンプの両方を
      自由に差し替え試聴できるようにしたいです。」

みみずく 「なるほど。そのほうが手持ちのオペアンプ資産を充分に活用できるね。」

アリス  「みみずく先生は何かないの?」

みみずく 「そうだなぁ、CR型のパッシブ・RIAA・フォノ・イコライザーを搭載してみたいね。
      MCヘッドアンプも込みのセッティングで。」

アリス  「何ですかそれ?」

みみずく 「古(いにしえ)のアナログ・レコードを聴くための黄昏(たそがれ)の技術だ。」

アリス  「ブラック・ディスクですね、なんかオモシロそう。」

みみずく 「いまどきフォノ・イコライザーなんてあんまり手に入らないし、あったとしてもNF型だからね。
      せっかくの自作なんだし、かつてマニアが愛用したというCR型の復活をお手伝いしようじゃないか。」

アリス  「あと、あたしはギター用のプリアンプにも使ってみたいわ。
      ライブでは長ーいシールド・ケーブルを引き回すから効果がありそうです。」

みみずく 「ダイレクト・ボックスやライン・ドライバー的な使い方だね。
      充分に可能だろうし、かなりの効果が期待できるんじゃないかな?」

アリス  「はぁぁぁ、楽しみですぅ〜♪」

みみずく 「フォノ・イコライザーもギター・プリアンプもアクティブ・アッテネーター式のプリアンプだからこそ
      実現可能なものなんだ。今回の企画、いい感じじゃないか。」

アリス  「本当ですね。まさにイイかんじです。」

みみずく 「あとは電源システムをどうするか、だ。」

アリス  「いろんな電源が使えるようにしたいです。
      トランス電源とかスイッチング電源とかバッテリーとか。」

みみずく 「お手軽に高性能を実現できるようにオンボードでレギュレーターを載せられるようにするといいかもね。」

アリス  「あ、それならminiReg2の出番です。こんなときの為につくっておいたのでーす。」

みみずく 「CRフィルターも搭載すると、よりタフな電源になるなぁ。」

アリス  「たくさん出てきましたねー。まとめてみましょう。」


【 Alice’s Pre Amp(ALP−1) 仕様 】
●アクティブ・アッテネーター式 高音質プリアンプ(VR可変抵抗はオンボード搭載)
●ディスクリート・バッファー・アンプ搭載(ダイアモンド・バッファー回路)
●1回路オペアンプ、2回路(デュアル)オペアンプ両対応
●オンボード電源システムとしてCRフィルターとminiReg2を4機まで近接搭載可能(正負両電源を左右別に給電可能)
●電源トランス、スイッチング電源、バッテリーなど様々な給電方式を考慮
●MCヘッドアンプ&CR型RIAAフォノ・イコライザーとしてもセッティング可能(しかも音量調整ができる)
●ギター用のプリアンプとしてもセッティング可能


みみずく 「なかなか盛りだくさんだな。」

アリス  「楽しいキットになりそうですね。」

みみずく 「さてと、具体的な回路はこうだな。」

アリス  「基板のアートワークはあたくしにお任せください。」

みみずく 「おぉ、頼もしいじゃないか、アリス。」

アリス  「トライパスのDCアンプ・スペシャルのキットと比べたら、こんなのモノの数ではなくってよ。と、あの頃を振り返ってみたりします。」

みみずく 「あはは、アレは確かに大変だったね。それじゃあ、完成を楽しみに待っているよ。」

アリス  「今日もありがとうございました、みみずく先生。」

 


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